1月8日

朝5:30起床。7:00ホテルをチェックアウトして空港まで送迎車で送ってもらう。現在の飛行ルート上の気象は良好。しかしロサンゼルスで一時雨の予報が出ているのが少し気になる。Flagstaff空港の現在の気象は、20度方向から5ノットの風、視程10マイル、快晴、気温-6℃との情報だ。

エンジンがかからず、バッテリーが上がってしまった。サービス会社の「Wiseman Aviation」にバッテリーの充電を依頼する。駐機場から機体を牽引車で引っ張ってきて格納庫に入れる。エンジンのカウリングを取り外して、バッテリーに急速充電器を接続して電源を入れた。近くにいた人がみんな寄ってきてカタナの観察を始めた。そして観察が終わると私は質問攻めにあった。「どこから来たんだ?」「これは自分の機体か?」「エンジンの馬力は?」「飛行速度は?」「航続距離は?」「燃料消費量は?」一通り質問が終わると、私は自分のヘアードライヤーを取り出して、少しでもエンジンを温めようとその熱風をエンジンに向けた。充電後は一発でエンジンが始動した。

バッテリーの充電中
バッテリーの充電中

9:30 Flagstaff空港を離陸する。ここは標高7000フィート(2130m)の高地で空気密度が薄いため、離陸性能や上昇性能が通常よりも低くなっている。慎重に上昇していく。離陸後すぐに左旋回してインターステート40号線に沿って高度8500フィート(地上から1500フィート)で飛んでいく。約15分でWilliamsの街が見えてくる。グランドキャニオンへの南の玄関口だ。ここから北に80kmほど行くとグランドキャニオンの大パノラマが広がっている。

3850mのHumphreyピーク
3850mのHumphreyピーク

カリフォルニア州境のコロラド川まで徐々に標高が下がっていく。Seligmanで標高5200フィート、Kingmanで標高3400フィート、コロラド川で標高500フィートという具合だ。Seligmanを過ぎると高度6500フィートに落とし、Kingmanを過ぎると高度4500フィートまで降下する。

インターステート40号線はKingmanを過ぎると、山を避けるため南側に大きく迂回している。しかし私はコロラド川対岸のNeedlesまで、山を飛び越えて最短距離を一直線で飛んでいく。飛行機ならではの醍醐味だ。Needlesから北へ40kmほど行くとネバダ州Laughlinの街がある。ギャンブル公認の街で、そこではおびただしいホテルのネオンが一晩中消えることはない。

Kingmanからコロラド川までは約50kmで標高が1000mも急激に下がっていく。まるでジェットコースターのようだ。ここまで来るとロッキー山脈を完全に抜けたことになる。ここから先は、地球上で最も乾燥した土地のひとつと言われるモハビ砂漠が広がっている。コロラド川を流れているのはグランドキャニオンの大渓谷を流れてきた水である。ここを渡るとカリフォルニア州だ。

コロラド川
コロラド川

Needlesを過ぎると雲の下に入った。しばらくするとキャノピーにポツンポツンと何かがあたってきた。最初は虫かなと思っていたが、よく見るとそれは小さな水滴だった。雨が降ってきたのだ。給油地のDaggett空港で着陸してTorrance空港の気象を調べると、雲低1200フィート、視程1マイル、強い雨、霧との情報。機体を借りているTorrance空港のフライトスクールに電話すると、現在はひどい雨でとても着陸はできないとのことだ。ロサンゼルス周辺の気象を調べるとTorranceまでは行けないが途中までなら行けそうだ。

Daggett空港
Daggett空港

サンドイッチとコーラで昼食を摂る。ハイウェイパトロールのセスナ機が2機着陸してきた。なんともアメリカ的な光景である。Daggett空港はアメリカ空軍の基地にもなっており多数のヘリコプターが配置されている。ここから西に100kmほど行くとスペースシャトルの着陸地点にもなっているエドワーズ空軍基地があり、その周辺は飛行禁止区域になっている。建設したばかりの真新しいセルフサービス式燃料ポンプを使おうとすると、係員が出てきて自慢げに使い方の説明を始めた。さっきまでレシートを印刷するプリンターの調子が悪いと言って、ボックスを開けて修理していたがどうやら直ったようだ。

Daggett空港を離陸する。雨は降ったり止んだりの繰り返し。空は一面の雲に覆われて視程も良くない。Corona空港を過ぎたあたりで急に雨が強くなり真っ白で何も見えなくなった。旋回して元の方向に戻り、小雨状態のRiverside空港に着陸した。

Riverside空港
Riverside空港

燃料を満タンにした後、空港内のFSS(Flight Service Station)の事務所を訪ねて気象情報を聞く。気象レーダーで見ると現在は広範囲で雨になっている。ロサンゼルスの雨は4時間後には回復するとのことであった。しばらくターミナルで待機することにする。1時間毎にTorrance空港に電話して気象を確認する。電話するたびに気象は回復して16:00には、雲低6000フィート、視程7マイルになっていた。

「これなら行ける」早速、出発準備をしてRiverside空港を離陸した。天気は完全に回復して西の空には夕焼けが輝いていた。Torrance空港に到着する頃には雲は12000フィートまで上がっていた。Torrance空港に着陸すると、フライトスクール社長のリチャードが出迎えてくれた。聞くとTorrance空港では午前10時から午後2時まで、バケツをひっくり返したような土砂降りだったそうだ。時差変更線を通過したので時計を1時間遅らせる。アメリカ大陸横断の旅が終わったのだ。

本日の飛行距離405ノーティカルマイル(750km)、飛行時間4時間54分

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