
5:30 起床。予定飛行ルートの気象を調べる。気象情報はテレビの気象専門チャンネル(全米の気象情報を24時間放送している)を見たり、FSS(Flight Service Station)やルート上の空港に電話したりして収集する。今日のルートでは天候不良の心配は無い。Austinあたりで多少の雲が出ている程度で概ね良好である。 7:00 東の空が明るくなってきた。出発準備を始める。ホテルのレストランでコンチネンタル形式の朝食。空港ターミナルまでホテルの送迎車で送ってもらう。 ターミナルカウンターで燃料代を払い、機体の駐機場所まで電動カートで送ってもらう。飛行前点検をしていると、すぐ隣の誘導路をマクドネル・ダグラスDC9が通り過ぎてその後離陸していった。これから私もそのDC9と同じ滑走路から飛び立つと思うと心が躍った。
まず空港のATISを聞く。風は130度方向から8ノット、快晴、気温4℃。絶好のフライト日和だ。そしてクリアランスにコンタクトして、離陸後針路90度、デパーチャー周波数125.1MHz、スコーク「0430」の指示をもらう。 続けてグランドにコンタクトして、タキシングをリクエストする。11000フィート滑走路「11L」の途中の、誘導路「A6」までのタキシング許可をもらう。カタナの離陸距離は短いので滑走路の端まで行かずに、途中の誘導路から離陸することになった。(Intersection Departure) 滑走路「11L」手前でタワーにコンタクトして離陸許可をもらう。離陸後はデパーチャーとコンタクトしながら飛行していく。朝日が眩しい。東の空に昇ったばかりの太陽に向かって飛んでいく。高度7500フィートで快適な飛行が続く。 Tucson国際空港を離陸してから、1時間ほどでニューメキシコ州に入る。ちょうどTucsonあたりがロッキー山脈の入口になる。ロッキー山脈と言っても日本の北アルプスの様な険しさは見られない。しかし中には10000フィート(3000m)を越えるピークもある。インターステート10号線に沿って、山々の合間を縫うようにフライトしていく。 Las Cruces空港が見えてくる。Left Downwindに入り、場周を回って滑走路「26」に着陸する。標高4500フィートのノンタワー空港だ。女性誘導員の指示で駐機場に停めて給油を依頼する。なかなか活気のある空港だ。小型機が次々と離着陸を繰り返している。
ターミナルにはパイロットショップやちょっとしたレストランもあり、家族連れなどで賑わっている。ターミナル内外ではCTAF無線(空港毎に指定されている共通周波数)が常時放送されている。離着陸する航空機の状況を伝えるためだ。私の声もここのスピーカーから流れることになる。 アメリカでは珍しいモーターグライダーが飛来した。カタナと同じメーカーの「HK36」という機体だ。16.6mの細長い主翼を持ち、エンジンを停止して滑空比28:1で滑空できる性能を持っている。上昇気流があればそれに乗ってソアリングしたり、ウェーブと呼ばれる山岳波に乗って小型機ではとても行けないような高高度までも、酸素を吸いながら飛ぶこともできる。
Las Cruces空港を離陸して、約20分でテキサス州に入る。その後El Paso上空を高度7500フィートで通過する。El Pasoはメキシコ国境の街。Rio Grande川を挟んだ南側はメキシコ・ファレスの街だ。El Pasoからその先約60ノーティカルマイル(110km)の間は、国境のRio Grande川に沿って飛行していく。川の両岸に街が点在しているのが見える。 アメリカへ夢と希望を求めて、不法入国を繰り返すメキシコ人が後を絶たないそうだ。経済不況に喘ぐメキシコから見ると富めるアメリカは「天国」だ。毎日何千人もの人々が越境を試みるが、そのほとんどはアメリカ国境警備隊によってメキシコへ強制送還されているのが現実だ。気温40℃を超える灼熱の砂漠を何時間も歩き続けて、命を落とす越境者もいるという。同じ大陸の隣国同士なのに、命を賭けてまで越境しなければならない苦しさを思いながらRio Grande川に沿って飛んでいく。高度7500フィートの上空から見ると、国境は感じられない。
Fort Stocktonに到着。風は160度方向から16ノット。快晴。右からの横風着陸になった。地上ではかなりの強風が吹いている。駐機してからも機体が風で飛ばされないか心配になる。セルフサービス式の燃料ポンプを使って給油する。出発準備をしていると地元の男性が2名寄ってきた。機体を見せてくれと言う。カタナはまだ珍しいのだ。 セスナ機が着陸してきた。ロサンゼルスからフロリダ州マイアミ・キーウエスト島まで行ってきたと言う家族連れに出会う。これからロサンゼルスのHawthorne空港まで帰るそうだ。HoustonからAustinあたりでは、雲が低くて視程が悪い上にアイシングに見舞われたそうだ。アイシングとは湿度が高くて気温が低い時に、主翼の表面や機体に氷が付着してくることを言う。主翼の揚力が低下して危険な状態になりかねない。大変なフライトだったと言う。
Fort Stockton空港を離陸してSan Angelo空港へ向かう。San Angeloの手前約50ノーティカルマイル(93km)付近から雲が出てきたので、徐々に高度を下げて雲の下を飛行する。ATISでは雲底3700フィートとの情報だが、地上から2000フィートの高度まで降下しないと地上が見えてこない。雲と地上の間の狭い空間を飛んでいく。 San Angelo空港の上空まで飛んで位置を確認した後、しばらく元の方向に戻ってからSan Angeloタワーにコンタクト。滑走路「36」にベースエントリーの指示をもらう。風は30度方向から13ノット、気温7℃。場周経路に入ったところで位置通報すると着陸許可が出た。 アプローチ中にふと滑走路端を見ると「36」であるはずの滑走路番号が「03」と書かれている。30度の狭い角度で2本の滑走路が交差していたため、着陸する滑走路を間違えてしまったのだ。タワーに滑走路変更のリクエストをして、そのまま滑走路「03」へ着陸した。燃料を満タンにしてくれたガソリン車でターミナルまで送ってもらう。 ホテルは近くのEcono Lodgeを紹介してもらう。一泊$44。ホテルの送迎車が空いていなかったので、ホテル側でタクシーを手配してくれた。地元の陽気なタクシー運転手がホテル周辺の店やレストランの場所を親切に教えくれた。 空を見上げると、一面の低い雲で覆われている。明日の天候が心配だ。夕食は近くのショッピングセンターのPizza Hutへ出かける。時差変更線を通過したので時計を1時間進める。 本日の飛行距離595ノーティカルマイル(1102km)、飛行時間6時間36分 |