究極の手打ちそばづくり    私のホームページへ戻る(ホームページへ)
プロローグ
  最近、書店では手打ちそばづくりに関しての書籍が増えてきました。しかし、これが手打ちそばづくりのコツというものがごまかされていて、素人ではその本を読んでおいしく食べるまでの手打ちそばはできないように感じますが、どうでしょうか。それは、そのコツなるものが、企業秘密のごとく扱われていて、いきなり経験がものをいうといったように紹介されているからです。もちろん、それは間違いないことですが、ただこれはコツをつかむのに経験がものをいうだけであって、コツはかくかくしかじかと分かりやすく書いてあってもいいのではないかと思うのですが。
  そこで私が体験した極意(コツ)を以下に記したいと思います。特に、解説をよく読んで下さい。よかったら、読むだけでなく、実際にやってみてください。 その結果について、どうであったかなどをメールにお寄せいただければ、幸いです。


(右の記事は私が指導中に偶然取材にきた記者によって掲載されたもの。)

まずは、自分一人のための手打ちそばを作ることから始める。

独身男性?のために(一人分)
T準備品       道具のたぐい
◎サランラップの芯 ◎大きめのボ−ル  ◎まな板  ◎大鍋(なければ普通鍋)  
◎すいのう(金ざるでもよい。もちろん鍋より小さいもの)  ◎包丁(なるべく刃渡りの長いもの)
      材        料
◎そば粉(コップ一杯) ◎小麦粉(なくてもよいが強力粉がよい。少々。)  
        о混合けずりぶし  о醤油  о黒砂糖 о日本酒少々(甘口の酒が良いだろう) 
                                                              ※оはそばつゆをつくる材料   

U手打ちそばの作り方             
0)こねる前に
可能ならば、そば粉を吟味したい。
о粉はすりたてが良いのは当たり前。店頭で買うなら、地域の物産店が良い。大型店やスーパーは怪しい。外国産が多いから。
о粉ふるいで、もう一度ふるう方が良い。できるなら油こしより細かい目のふるい。粉かすを除くため
1)こねる

@ボ−ルにそば粉(コップ8分目)と小麦粉 少々を入れ、よくかきまぜる。(水まわし)
     そば粉(コップ2分目)はコップの中に入れておく。←打ち粉として使う。 
A水を少しずつ(極端にいえば一滴づつ)入れながら、よくかき混ぜる。(水の量はコップ五分の一程度か?)
     ↑               
 一度にドバッと入れると失敗する。 [初心者におすすめのアイテムがあります。]
  粉全体を均一に湿らせる。と、パン粉状になる。ここの所で一端水を加えるのを止め、よくかき混ぜる。
 目安・・・・・・かき集めて固めて崩すとボロボロする程度の湿り気。
B更に水を少しずつ慎重に入れながら、よくかき混ぜる。そして湿ったそば粉が全部固まる一歩手前で水を加えるのを止める。
     ↑               
       この過程で一番のコツ
C湿ったそば粉を全部固めて、よくこねる。こね方はあなた任せ。粘り気が出てくるのが良く分かる。この方法だとすぐこねられる。
    よく、200回以上などといわれるが、そんなことはありません。
D筋がないように、ボールの丸みを利用して軽く押しつけたりして、最後は滑らかな表面にして丸める。そば団子の出来上がり。

2)のす
Eまな板の上に、そば粉をふりかける。その上にこねて丸めたそば団子をおく。最初は手を使って丸く偏平にする。
Fそば粉をふりかけ、サランラップの芯で伸ばしていく。
 о時々そば粉を振りかける。(うち粉という)これを怠るとくっついて失敗する。
G最初は軽く丸くのし、その後四方に伸ばしていく。
H伸ばしたのを、包丁の刃渡りより短めになるよう畳む。この時、そば粉(打粉)をかけながら畳む。(屏風のように畳むたたみ方がよい)

3)切る
Iなるべく細く、均一に切る。(熟練を要するが、多少の太さはご愛嬌)
J切ったそばの端を持ち、振り分ける。

4)茹でる
Kお湯を沸騰させた大鍋(普通鍋)にそばをサッと入れる。火力やそばの太さにもにもよるが、そばが浮いて1分ぐらいたったらあげ時。
L冷水(水道水でよい)入りのボ−ルを用意しておき、そばをすいのう(金ざるでもよい)ですくって、その中にいれる。適当にかき混ぜながら滑りをとる。冷水を2度は替え、水を切って皿やそばざるにあげる。出来上がり。 

〔解説〕
 そばをこねるのに一番難しいのは、ずばり水加減。いい加減にしてはいけません。いい加減にするとそばがよく茹だらないし、うまくのして切ったようでも、茹でるとぷつぷつと切れて箸にかからず、スプーンですくって食べざるを得ない手打ちそばになります。そばの澱粉が水と熱で化学変化を起こし、デキストリンになるわけで、澱粉に水がよく結びついていなくては、それこそ生で食べるはめになります。従って、A・Bの段階を必ずふむこと。そば粉全体が均一に湿り気を帯びることが大切。均一に湿らせていくことが大事。粘りも出てくるし、打ちやすくなります。また、柔らかすぎたり、固すぎたりと様々なこね状態が考えられますが、数回打てば、そのカン所(極端にいえば、あと一滴水をたらせばかき混ぜている湿ったそば粉が全部くっついてしまうだろうといった臨界点)は体験できるはずです。では、その水加減をどう調節すればよいでしょうか。一つは、急須を使い水を入れる方法が考えられます。もう一つは、水道の蛇口を調節して入れる方法です。私は後者でやっています。そして、ここでもう一つ究極のアイテムを紹介します。,
    CDの段階では筋目は当然でるわけですが、中へ中へ練り込んでいくようにこねていくと比較的筋目がでずに、こねる事ができます。(菊練りといいます。)筋目をそのままにしておくと、後で延ばす時に切れてしまう原因になります。ただ、一人分の量ですので、A・Bの段階をきちんと踏んで、水の量が最適ならば、一端丸めたそば粉をまんべんなく軽く押しつけ、押しつけすればよい。それだけで、充分粘りも出てきます。
 のしの段階ではまず、「まるだし」といって練り上げたそば粉の大きな固まりをのし板の上で、丸く平らに打ち延ばす仕事です。その後「四つだし」「幅だし」「肉わけ」「のし」「仕上げ」「たたみ」の順となる。わかり易くいうと始めは丸いものを、四角にして、それから四方に延ばして最後に切りやすいようにたたむわけである。ところで、その際の打ち粉ですが始めはたっぷり使うことがコツです。これをけちると後は散々な目にあいます。打ち粉には四つの働きがあって、先にふるった打ち粉はそばの中にしっかり打ち込まれ、後から打つ打ち粉は包丁の滑りをよくして、茹でる時に湯の中にとけて、これが「そば湯」になるのです。それとまな板(のし板)やサランラップの芯(のし棒)にそばがくっつかないようにするためで、あと一つはまな板(のし板)についている打ち粉がそばを延す時の緩衝剤となって適度に延ばしてくれます。まな板の上で、一人分の手打ちそばを作るときは自分の好みでのしてみて下さい。とにかく薄く均一にのすことが寛容です。経験をつめば、上手になっていくでしょう。
 切る段階では何といってもそば切り包丁がよいでしょう。重量感のあるものがよいと思います。ちなみに私は25000円で購入したものを使っています。それに、「駒板」がいる。この「駒板」をのしたそばの上にあてて、垂直に(正確にいうとごく僅か斜めに切り下ろすのがコツ)、同じ幅でなるべく細く切っていく。書き忘れたが、延したそばのたたみ方は、折り返してたたんだ方がよい。しかも、上にいくに従って狭くしていくと織り目のところで切れることが少ない。(屏風たたみといいます)つまり、長い手打ちそばができます。切る時のコツは切った直後、包丁の背で刃をずらさないようにして「駒板」を軽く押します。そうすると「駒板」が次に切る分だけ移動する。(ごく僅か斜めに切るとこの作業が素早くできる。)これを目にも止まらぬ早技で・・・といきたいが、これだけはいまだ私も修行の身です。また、名人と呼ばれる人の中にはこの「駒板」など使わずに切り揃える方がいますが、脱帽です。私にはあんなまねは決してできないと思うのでやりません。 一人分の場合は量が少ないので、この駒板の替わりをサランラップの芯でやります。また、普通の包丁でも十分できるので、手を切ることなくどなたでもできるでしょう。
    茹でる段階では煮えたぎる鍋の中に、切ったそばをさっといれる。しばらくすれば浮き上がってきます。そばの太さにもよりますが、その後1分くらいが茹で加減の丁度いいところでしょう。手打ちそばの茹で時間は麺類の中では一番短いのです。もちろん、差し水など必要ありません。その後、これをすいのうや金ざるなどですくって、冷水に漬けてそばを引き締め、手で軽くかき混ぜよくゆすいでから器に盛るのです。(ゆすぎは三度くらいがよいでしょう)やや乾き加減のところで、そばつゆをしませて食べるのが、そば通のグッドタイミング。くどいようですが、茹でる時は煮えたぎる大なべ、湯をけちってはいけません。また、一度にたくさんそばを入れてもいけません。多くても片手で一掴みがいいでしょう。ただ、一人前ですので、普通鍋で十分です。                         

   私は水のみを使って打ちます。巷では最初の段階でちんちんしたお湯を使う方法が流行っています。どちらがいいかは、おまかせしますが、いずれにしても、この方法でそば粉100%の手打ちそばも十分できます。また、一人分としたのは、やはり最初に失敗なく体験することが大切と考えるからです。かりに、水を入れすぎても、その分そば粉を足せば何とかなります。いきなり多い量でやると水加減を失敗すれば取り返しがつきません。量が多いと一生懸命こねても修復はできないからです。(私の経験上)また、手早くやっていくということも大切とされていますが、こねる段階の時、すぐ表面が乾いてしまうような場所でやっているとは考えにくいので、そんなに神経質になることはありません。
    一人分の手打ちそばづくりで自信がついてきたら、量を増やしたり、道具を揃えたりなどして、のめり込んでいったらどうでしょうか。この方法で、もし失敗したら自己責任で後始末をすればいいことです。胃袋に入れば同じことですので。

Uそばつゆの作り方
(作る分量はいい加減。あまったら煮込みなべや湯豆腐に利用すればよい)
    そばつゆは、人によって(お店によって)さまざまな作り方をしていますが、基本的には「かえし」と「だし汁」でつくります。「かえし」には大きく分けて「ほんがえし」と「生がえし」があり、その中間もあります。「ほんがえし」は醤油、砂糖、味醂を煮溶かしてつくり、冷暗所でねかせておきます。厚削りの鰹節で「だし」をひき、ねかせておいた「かえし」と合わせてそばつゆにするようです。
    私の場合は、師匠から教えていただいた方法で作っています。これでも、十分納得できるそばつゆができるからです。
@なべに水を入れ、そこに混合削り節りぶしを入れ煮込む。(水の量や混合削り節の量はいい加減でよい。水の量が多すぎると後の始末が大変ということを頭に入れておく。少なすぎると焦がしてしまう。混合削り節については、多いかなと思う量で良い。いずれも量については経験がものをいう世界です。)沸騰してから最低20分は煮込む。
A煮込んだ汁を金ざるを使うなどしてかすを取り出す。いったん取り出した汁をそのままにおけば、取り除けなかった固形成分が下に沈むのでもう一度鍋にあける際に取り除くとよい。
Bこしとっただし汁を火にかけながらに黒砂糖をどばっと入れ、醤油を追加し、よく攪拌し味を調節しながら醤油と砂糖のバランスをとっていく。つまり、甘すぎたり、しょっぱすぎたら水(お湯)を追加すればいいだけのこと。この時、一流コックの気分を味わえる。
C味がととのったら、日本酒を少量入れて、汁が沸騰したら火をとめてさます。出来上がり。

〔解説〕
    ずいぶんいい加減と思われるでしょうが、これくらいだと料理の楽しさが味わえますよ。また、鰹節はこの方法でのだしのとり方は良くありません。苦みがでてしまうからです。私は業務用の混合削り節といったものが一番よいと思っています。砂糖より黒砂糖の方がいいように思います。いわゆるこくが出てきます。醤油については、キッコーマンといったような有名メーカーものは使っていません。『美山しょうゆ』(販売元 長野県明科町(株)山治平林醸造店)を使っています。今までいろんな醤油を試してきましたが、これ以外は使う気がしません。日本酒は甘口の酒なら何でもよいでしょう。この日本酒を入れることによって味が引き立ってくるのが分かります。味醂を加える方法もあるようですが、味醂は拒絶反応を示します。一度試してみたのですが、さんざんな味になったので。とにかく、手打ちそばのつゆづくりは伝統や経験がものをいう世界です。わたしにとって奥が深すぎて深すぎて。しかし、究極の手打ちそばづくりへの意欲は衰えることはありません。そして、この方法なら誰でも手軽に作れるでしょう。

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