もくじへ 日本蜜蜂の飼育の極意
1) 冬越しさせた群は必ず内検し、空巣はできるだけ取り除く。
※空巣→卵・幼虫や貯蜜もなく蜂たちも群がっていない巣の部分
(暖かい日に行う。この時期は刺される場合があるので、網を被って作業すること。)
空巣があると巣虫が入り込み、巣かじりをしながら、アメリカシロヒトリ状の膜を張り、それが巣全体に及ぶ。逃亡や全滅の原因になる。
巣の周りに、蜂の蛹や幼虫の死骸がある時(働き蜂が外に運び出している時)は、その巣は巣虫の被害にあっている証拠。
働き蜂が取り巻いている部分の巣は心配ない。
蠅のような蜂(写真1))が午後頻繁に飛び交うようになると、分蜂が近い。
内検し、王台を確認すること。 写真2)のようになっていると、一週間ほど後で、 雨天でなく風の強くない日をねらって分蜂する。 ※巣虫→ハチノスツヅリガやウスグロツヅリガなどの蛾の幼虫。巣をかじり、幼虫や蛹の体液を吸いながら成長する。
写真3)は第一分蜂直後の写真。先端が働き蜂によって削られ茶色になっていて、新女王蜂が自らの力で出やすいようになっている。
写真1) 雄蜂の巣穴の蓋 写真2) 写真3)
2) 分蜂の前にやっておきたいこと
キンリョウヘンを空巣箱の近くに置き、それを家の周りで、適切な場所(邪魔にならない。日陰で風通しが良い。)に置いておく。(分蜂予定巣箱の近くにおいても効果はなかった。)キンリョウヘンはタマネギ収穫用の網等で覆っておくと良い。[写真 4)]  網をかけてあっても、雄蜂をも引き寄せてしまう
<どんな巣箱が良いか>
・巣箱の正面に直径1cmぐらいの丸穴をあけておくと良い。
・大きさ 縦30cm 横30cm 高さ60cmくらいが基準。巣門の高さは5mmが良い。4mmくらいになると巣門を広げようとかじる蜂が出てくる。5mm以上になると、スズメバチに巣内に入り込まれる心配がでてくる。
・地面には直接置かず、ビールケース等の上に置く方が良い。 <キンリョウヘン> 写真4)
・巣の上板(内側)に巣屑をバーナーやハンダごてなどで溶かし、塗り付けておく。内壁も。
探索蜂(引っ越しするために新しい巣を探している働き蜂)が寄ってきて、その数が多くなれば分蜂群は直接移動して、巣箱やキンリョウヘン周囲に蜂球をつくり、準備した巣箱に入り込む確率が高い。                    
3) 分蜂蜂球が木の枝などにできた時に巣箱に入れる方法→蜂をつぶしてはならない。
@ あわてず、女王蜂がいるか確認(視認)する。いる場合は蜂球の周りでチョロチョロして出たり入りこんだりしている。ザワザワせず落ち着いた蜂球なら、まず間違いなく女王蜂がいる。ザワザワした蜂球はまだ女王蜂が到着していない(蜂球の中にいない)場合が多い。
A 女王蜂がいる付近を逃さずになるべく多くの蜂をねらって、一気に巣箱に蜂を入れ込む。(素手でもやれるが)網などで取り込み、巣箱の口を大きくあけて、誘い入れるようにすると、ぞろぞろ巣箱に移動していく。
[女王蜂が確認できたら、大口のペットポトル(空気穴を空けておく)などを使い、事前に捕らえておく方法も良い。]
B その後、蜂球場所のなるべく近くに巣箱を置いておく。(場合によっては脚立など必要)女王蜂が入っていれば、取り損ねた蜂も入っていく。女王蜂が入っていない場合は、巣箱から逃げ出し、再度蜂球を作るので、再挑戦。
             
(先に入った働き蜂がお尻をあげ、特有の臭いを発して呼び入れていることが観察できる。)
C 全部取り入れたら、適切な設置場所に運ぶ。直射日光をがあたらず(少しは良い)、風通しもよく夏は涼しい所が良い。直接地面には置かない方が良い。
4) 設置してから
花粉を頻繁に運んでくるようなら、女王蜂が卵を生み、幼虫が育っている証拠。2〜3日でこうなったとすると旧女王蜂(元の巣の女王蜂)。一週間〜10日前後ならば、娘女王蜂(新しく生れたばかりの女王蜂)の分蜂ということになる。娘女王蜂の分蜂であった場合は、まだ未交尾。午後1時から3時頃の間に巣を出て、雄蜂と交尾して戻ってくる。事故のないことを祈る。
設置場所を大きく変える必要がでた場合は、少しずつ(巣の口の大きさくらい/l日)変えるか、一端2km以上離れた場所で、1週間くらい置いておき、新しい設置場所に戻すこと。そうすれば帰巣プログラムができている外勤蜂は巣の周囲の状況が把握出来ないので帰巣プログラムを組直す。
車などで移動する場合は、巣の状況(巣板の方向、大きさ)を確認し、巣板が壊れて落ちない工夫が必要となる。多くは巣板に直角になるよう巣箱の横板にドリルなどで穴をあけ、最低一本の支え棒を差し込み、3〜4日はそのままにしておいて、移動する。
分蜂群の取り込み後の逃走防止用の3.6mmスリットを効果的に使う。
(働き蜂は通過できるが、女王蜂は通過出来ないスリット) 製品名「ハチマイッター」などある。自分で作って試してみてはいかがでしょうか。アクリル板だと加工がしやすい。
蜘蛛の巣への対処
働き蜂の巣門近くの飛行空域には必ずといっていいほど蜘蛛の巣ができるので必ず蜘蛛本体ごと取り除く。
ハチマイッターを巣門に取り付けた状態
時々は様子を見る。(内検して、巣の大きさ、卵や幼虫の有無、花粉の運び具合、働き蜂の通い方など)日中の暖かい日なら、まず刺されることはない。巣内の巣屑を取り除く。
1) 内検の項目        アクリル板製(自作)
@ 巣屑の有無 ・・・・ 巣屑をそのままにすると巣虫の卵がそこに産みつけられてしまうので、取り除く。
A 巣の状況 ・・・・・・ 巣板の大きさ、方向を確認する。大きくなれば対処する。育児巣だった所に、蜜をためるようになるとその重みで巣が落ちて壊れる場合がある。特に夏の暑い日は巣が軟らかくなる。
<重箱型巣箱の巣箱枠を増設する方法>  <支え棒の入れ方>
о巣板に直角の方向になるように、継ぎ足す巣箱枠に支え棒を二本取り付ける。
о挿入する箇所のガムテープを剥がし、巣を持ち上げ、その間に巣箱枠を入れる。
о元通りにする。ガムテープで固定する。
о巣板と直角になる方向になるよう、横壁に支え棒と同じ経の穴をドリルであける。 やや、上方に向ける。ぴったりする穴ならなおさらよい。支え棒の先端は細く削る。ゆっくり差し込み、反対壁につける。抜けないようにガムテープで固定する。         
B スズメバチへの対処(夏〜秋)
巣門の高さを5mmにしてあれば、入り込まれ、全滅というようにはならないが、若干の被害は出る。オオスズメバチの駆除方法は、ハエ取り紙(鼠取り用も良い)に一匹捕らえて、くっつけておくと仲間のオオスズメバチもくっつく。面白いようにくっついて、駆除できる。なければ、養蜂家が使う捕獲器か捕虫網やバトミントンラケットなどで宮本武蔵の如く駆除するしかない。小型のスズメバチは被害も少ないので放っておいてもよいが、できれば捕虫網やバトミントンラケットなどで助けてあげたい。ペットポトルを利用した捕殺器を使用してみるのも良い。
オオスズメバチ災難
1) 蜂を殺さず、安全に採蜜する方法(暖かい日が良い。寒冷地では10月下旬〜11月上旬が適期)
準備品・・・・・・・・ヘアードライヤー、金槌、巣切りナイフ(穂先5mm程を直角に曲げたナイフ。ペーパーナイフの先を曲げたものなど)
※寒冷地では10月下旬〜11月上旬が採蜜の適期。産卵が止まり、貯蜜も多い。逃亡もしにくい。
@ 巣箱を横にするので、巣の下方部が壊れないように事前に補強する。1週間くらい前までにやっておく。方法は<支え棒の入れ方>を参考にする。巣の下の部分の支えになるように、巣板の直角方向に横棒を2本以上刺す。壊れた傘の骨や菜箸を利用する。それらを刺せる穴を電気ドリルであける。(やや斜め上方に空ける。刺した横棒は反対側壁面につきあてること。差し込み口部分は固定しておくのがコツ。また、菜箸の場合はドリル穴の大きさと菜箸の太さがぴったりあうようにするとなお良い。
A 横にしても箱がこわれないように、また、蜂が出ないように、ガムテープなどで完全補強し密閉して、巣箱は5〜6m移動する。作業のできる適当な高さの台の上に新聞紙を敷き、その上に置く。
B 巣箱を静かに傾け、横にする。(なるべく、巣板が直角になるような方向にする。この方が巣の下部分が壊れにくい。)
C 巣箱の上蓋や上部分を金槌で軽くたたいて、振動させ、蜂を巣の下方向に移動させる。蜂たちの性格やたたき方によるが、下方向に移動したかは、羽根音でわかる。大部分の蜂はこれで移動する。
D 静かに上蓋をあけていく。幾分、あまのじゃくの蜂が残っているので、ヘアードライヤーで風をあてながら、 蓋をあけ、強制移動させる。
E 蜂がいなくなるので、蓋を完全に開け、巣切りナイフで適当量蜜巣を切る。この際もあまのじゃくな蜂がいるので、ヘアードライヤーの風をあてながら行う。(重箱式ならこの段階で、採蜜枠を針金などでバサッと切り落とす。)
F くれぐれも、蜜巣をとり過ぎないように。越冬分の蜜は残しておく。
G 元通りに蓋をして、巣箱があった元の位置に置く。元の巣の位置の周りには蜜をたらしたままにしない。新聞紙などで拭き取り、垂れてきた蜜は取り除くなど採蜜した巣からは蜜の匂いをさせない工夫が必要。
2) 採蜜後
冬越しの食料用に砂糖水を与える。
蜜が入っていない空の巣穴に砂糖水から作った蜜をため込むので、砂糖水の吸いあげが止まるまで、与えた方が良い。砂糖水の配合は5:5。小皿に砂糖水を入れ、巣内に置くが、蜂たちが溺れない工夫をすること。また、一匹の蜂がようやく通れるくらいでよいので、巣門を狭めておく。[これは盗蜂(盗蜜ともいう)がおきないようにするためだったり、巣虫の成虫(蛾)が入り込みにくくするため、防寒のため。]
3) 冬越しのための準備
下方からの冷えを防ぐために、発泡スチロールの板を置き、その上に巣箱を置く方ががよい。(ただし、発泡スチロールで全部覆うことは厳禁。湿気がたまるから)巣箱全体をすっぽり段ボール箱で覆う。被せる。巣門は狭くしたままにする。段ボール箱も巣門からでてくる蜂が出られる様に、小さい穴をあけておく。
冬でも暖かい日は出てきて、茶色の排泄物を出すので、洗濯物など近くには干さないこと。
砂糖水を効率よく取り込むのに効率的な「蜂の柱」現象
特に世話をすることはない。そのままにして、冬越しできるのを祈るのみ。
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